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弊社では,インターネットを利用する迷惑行為の抑止のため,電気通信事業者の立場でできるだけの対策を講じています.
特に迷惑メールの送信に弊社ネットワークが使われた場合,当該契約者に対し中止の要請や利用停止などの対応を行い,最終的には契約を解除することとしております.
しかしながら,最近になって迷惑メールの送信行為を理由とする契約解除件数,その中でも即時利用停止を実施することもやむを得ないとして対応を行う例が急増しており,中には実質的に同一と思われる利用者が複数の借名名義を使い分けて加入するなどの事例も見受けられています.
弊社では以前より契約受付後は書面を郵送し,それが返送された場合は直ちに利用停止を行ってまいりました.さらに2003年6月からは,お支払方法がクレジットカード以外の方について契約時に本人確認資料の提示をお願いするなど,虚偽の加入申込がなされることを避けるための努力を行ってまいりました.
しかし,弊社は民間の事業者であり,加入者の実態を調査する権限も能力もないため,加入時の審査による手法はこれ以上難しい水準となっています.(実態として迷惑行為を行う利用者はこうした審査をくぐる方法を取るものであり,加入時審査を厳しくすればするほど一般のご利用者ばかりが不便になることも見逃せない事実です.)
このため,迷惑メール送信を行う利用者への対応は事後的に契約解除等の措置を講じることが主となりますが,最近の主流であるいわゆる自前サーバからの送信の場合,送信行為の証拠がISP事業者に全く残らないため,受信者から寄せられる報告の積み重ねによって行っています.この場合報告の件数がある程度集まらないと対応は困難であり,結局送信行為を開始したと推定されるときから利用停止までには一定の時間(期間)を要することとなっています.(なお,弊社のメールサーバを経由するメールについては,2002年の段階で送信通数の制御を実施し,一定以上の送信を行うIPアドレスからはメールの中継を拒否する扱いをしています.)
弊社は,これらの取り組みに加え,以下の技術的,制度的な対応をさらに推進いたします.これにより,電気通信事業者に課せられた期待に少しでもお応えできるように努力してまいります.
さらに,弊社は,単に「迷惑メールの送信をやめさせること」にとどまらず,電気通信事業者として可能な限りの迷惑行為対策を,最終的に迷惑行為の抑止につながるような形により模索してまいります.
インターネット利用者が直面する現実的な問題として,1つのISPが利用停止を行ったとしても,すぐに他のISPで取得している「在庫」のアカウントから送信が行われるため,利用停止等の措置の効果は単に「自社のネットワークからの迷惑行為を止める」ことにとどまり,「インターネットから迷惑行為をなくす」ことに全くつながらないという根本的な問題があります.
多くの方がすでにお感じのことと存じますが,迷惑メールを含めた迷惑行為の多くは,速やかに法律を制定したうえ,公権力が違反者を法に基づいて処分・処罰することでしか撲滅できない問題です.
この問題についても,すでに行政庁の研究会への意見提出,業界団体である日本インターネットプロバイダー協会を通じた法制度整備のための取り組みなどを行っており,この取り組みを今後も続けてまいります.
(参考)
総務省の「迷惑メール研究会」に提出した弊社意見(2005年7月)
いわゆる「ワンクリック」サイトへの利用停止の実施について(2005年7月)
新たな技術的な対応
外向き25番ポートへの接続の一部制限
※詳細はこちらをご参照ください
弊社に限らずISP利用者からの迷惑メールの送信は,ほとんどの場合「自前サーバ」から行われます.(通常のメール送信の多くがISPのメールサーバを経由するのと対照的です.)
具体的には,契約者回線に接続された自前のメールサーバから,迷惑メールの送信先のメールサーバの25番ポート(メールを受け取るポート)に直接送信を行います.
このためすでに一部の事業者において「外向き25番ポートのブロック」が行われています.この方法によれば,利用者が直接外部のメールサーバにメールを送信することができず,必ずISPのメールサーバを経由しなければならないことになります.ISPのメールサーバは送信通数の制御が行われていることが通例であるため,迷惑メールの送信抑止に効果があると説明されています.
一方,利用者の中には会社や他の組織のメールサーバをPOP before SMTPなどの手段により利用している人も多く,弊社のお客様の中にもこうした形態のご利用をされている方が多数いらっしゃると認識しています.弊社は,迷惑メール対策という理由はあるものの一般のお客様への影響が大きすぎ,現時点でこれを採用することは妥当ではないと考えています.
そもそも通信サービスの利用方法は第一義的には利用者の自由であって(違法行為が後で法律に基づき処分されることは別論),電気通信事業者が一方的に規制することが妥当かという問題については一般の利用者の間でも賛否両論があるものです.(さらに,25番ポートをメールサーバ以外が使うことも禁止されていません.)
このような状況を踏まえ,できるだけ一般のお客様への影響を避けながら,弊社のネットワークを迷惑メールの送信に利用されにくくする方法を検討してまいりました.
弊社では,今回,「外向き25番ポートへの同時接続数の制限」,「同ポートへの接続遅延」の2つについて,効果を実証するための実験を行いたいと考えております.
この手法は,一般利用者と迷惑メール送信者の利用形態およびメーラの機能の差に着眼したものです.
迷惑メール送信者は,効率よく大量のメールを送信するため,同時に多数のメールサーバへの接続を張り,それぞれから次々とメールを送信する機能を有するメーラを用いるのが普通です.それに対し一般利用者が使用するメーラは同時に多くの接続をすることはなく,また,一度に送信する通数も限られていると思われます.
このため,(1)同時に外向きの25番ポートに張れる接続の数を一定の数に制限する (2)1回の接続ごとに一定時間の遅延を生じさせ,メールの送信に時間がかかるようにする の2つの対応を実施することで,実質的に契約者回線から直接送信できるメールの量を制限できることを期待しています.
一般のお客様への影響については,メールの送信操作を行う際に必要な時間が少々延びることがありますが,遅延時間を適切に設定することで,一般のお客様のご不便を少しでも回避したいと考えております.
新たな制度的な対応
提供約款の整備による対応
弊社では,近日中に提供約款を改定し,(1)利用停止ができる場合の整理・強化 (2)最低利用期間の設定 (3)本人確認実施規定の整備 (4)迷惑行為により契約を解除する場合に同一名義の他契約を解除できることの明文化 などを実施し,さらなる迷惑行為の抑止に取り組んでまいります.
提供約款の改定は2005年11月を予定しています.
※詳細はこちらをご参照ください
利用停止規定の整備
弊社の提供約款においても,「迷惑メール送信者への利用停止」について規定が整備されており,迷惑メールを送信したと認められる契約者に対しては利用停止や契約解除を実施しているところです.
しかし,現行規定の書きぶりでは,概ね,「迷惑メール送信等の行為を行った人」に対し,「利用停止を実施することがある」とした規定となっています.
一般にISP事業者の約款においては,利用停止の理由を広めに設定し,事業者の裁量により利用停止等を実施しているのが現状と思われます.このことは迷惑行為等に対応しやすいと一見考えられますが,契約者に対する利用停止は電気通信事業法の規定(利用の公平)により自由に認められるものではなく,正当な理由なく利用停止等を行えばこの規定に抵触する可能性があります.
弊社では少なくとも法令に違反する迷惑メールの送信であれば利用停止を実施することもやむを得ないものであり事業法に抵触するものではないと考えておりますが,何をもって送信の行為を認めるのか,どのような場合に即時の利用停止がありうるのか,そもそも契約者に悪意がない場合(例えば,設備に侵入されて不正利用された場合)などについては約款上明確ではなく,迅速性と適正な手順の両立が困難な中で利用停止等を実施しています.
このため,利用停止事由を「特定電子メール法に違反する広告メールが契約者の設備から送信されていることが,弊社に寄せられる報告等により明らかになった場合に,直ちに利用停止をすることがある」(要旨)と具体的な要件を明示し,お客様にはこの内容を事前に周知することにより,弊社のリスク回避を行いながら迅速な利用停止を行いうる制度に改めるものです.
迷惑メール以外にも特に緊急性が高い事例として,他のホストへのアタック,ウイルス等の配布,フィッシング,いわゆるワンクリック詐欺等のうち危険な事例についても同様の取り扱いができる旨を定めています.
なお,これらに当てはまらない迷惑行為,違法行為については,従来どおりの対応を考えています.多くの事例では,自主的にその行為を止めていただくようにお願いの上,応じていただけない場合に利用停止を実施することになります.
※迷惑メールに限らずこのような迷惑行為の事例については,お客様に悪意がなくサーバやコンピュータ等を不正使用されてしまう場合もあることから,慎重な対応を実施しています.
最低利用期間の設定
最低利用期間や契約解除予告期間を必要以上に取ることは消費者保護上望ましくないことから,弊社ではダイアルアップ型IPルーティングサービス(フレッツによる接続を含みます.)については最低利用期間を設けず,また,契約解除予告期間についても14日間とするなど,常にお客様の利便性を最大限に考えたサービスを実現しています.
しかしながら,最近になって迷惑行為を理由とする契約解除件数が急増しています.これらの契約者は利用期間が一般のお客様の平均に比べ著しく短く,弊社の料金制度ではほとんどの場合利用期間に相当するごくわずかな料金しか回収できておりません.
ご承知のとおり,電気通信事業者が契約者との契約を一方的に解除するためには相当の理由が必要であり,仮に最終的に裁判所で正当性が判断されることになったとしても十分事実関係等を立証できるだけの証拠が必要とされると考えております.
このため弊社においても事実関係の調査から対応の記録などの調書を作成の上極めて慎重に利用停止等の措置に踏み切ることとしていますが,1件の利用停止・契約解除を行うためには数万円の費用を要しているのが現状であり,この費用は結局のところ一般のお客様が間接的に負担しているものです.
弊社では,迷惑行為により契約解除を行う契約者に対し正当なコストの請求を行えるようさまざまな方法を検討しましたが,損害賠償として請求する場合はその実効性の担保や提供約款の有効性等が問題となり,また,クレジットカードや自動引落により売上代金以外の債権を回収することは制度上難しいなどの問題も生じます.
これらを総合的に考慮した結果,最低利用期間を設定することで,これら迷惑行為を行う契約者から正当なコストを回収することもやむを得ないとの結論に達しました.
しかし,一般のお客様が転居や他事業者への乗り換えにより短期間で契約を解除しなければならない事例も多く,弊社としてもこのような事例において解約の自由を制限するようなことはあってはならないと考えています.
このため,最低利用期間の規定には但し書きで例外を設け,一般のお客様が自己都合で解約される場合についてはこの規定を適用しないことができることといたします.
提供約款上の最低利用期間は6ヶ月と定めることとしますが,迷惑行為により強制解約を行う理由がある場合など特別な場合を除き,最低利用期間の規定は適用せず従来どおりの扱いとする方針です.
本人確認実施規定の整備
インターネットを利用する犯罪や迷惑行為が多発しておりますが,ご承知のとおりこれらの撲滅には公権力による捜査や被疑者の検挙が行われるほかはありません.
また,名誉毀損など個別的法益侵害が行われた場合の救済については,プロバイダ責任制限法の整備により被害を受けた人がISP事業者等に発信者情報の開示を求めることができることとされています.
しかしいずれの場合もISP事業者等が契約者の正しい住所や氏名を把握していることが前提であり,加入契約が虚偽の氏名により行われていれば,仮に犯罪捜査や発信者情報の開示等が行われたとしても,被疑者の検挙や被害の回復が期待できないこととなります.
このため,ISP事業者等が加入時に契約者の本人確認を実施することが徹底されれば,その事業者のサービスの利用者が行う犯罪や迷惑行為に関する限り,ある程度その後の被害救済等の可能性が高まることになります.
一方,電気通信事業者は迅速・簡便な手続によりサービスを利用できることを期待されているものであり,そもそも全員に対して本人確認を実施することは現実的ではないものと考えられます.(本人確認の実施は,一般のお客様に多大な負担をかけるものであり,ほとんどのISP事業者で行われているオンラインサインアップの利便性を否定することになります.)
このため弊社ではクレジットカードによる契約については申込がオンラインサインアップであることおよびカード会社を通じた本人確認の可能性が高いため本人確認を省略し,その他の支払方法の場合は書面による申込が必要であることおよび提出された書面の内容が事実であるかを確認する方法がないことから,本人確認書類の提示をお願いする方法により,この調整を図ってまいりました.
しかしながら,現実にはクレジットカードでも虚偽の氏名や借名による申込等を行う事例も存在しているため,弊社が必要と認めた場合はご利用中であっても本人確認を実施し,それに応じていただけない場合は契約を解除することがある旨を提供約款により定めさせていただくものです.
複数契約の場合の一括利用停止規定の整備
迷惑行為等により利用停止や契約解除を行う場合において,同一の契約者が複数の契約を有している場合の解釈は提供約款上明確ではなく,弊社の解釈により明らかに同一の人と見られる場合は同時にすべて利用停止等を実施してまいりましたが,今般の提供約款の改定によりこの取扱いを明文化します.