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迷惑メールについての弊社の対応
1 弊社ネットワークから迷惑メールが送信されている場合
弊社では,提供約款により,弊社網を利用したいわゆる迷惑メール(ここでは,無断で大量に送りつけられる商業広告メールをいいます。ただし約款の解釈を拘束するものではありません。)の送信を禁止しており,違反した契約者に対しては事実確認のうえで以下の措置のいずれか一つまたは組み合わせた措置をとることがあります。
(1)改善の請求
(2)利用停止
(3)契約解除
(4)当該契約者の再度の契約の拒否
しかしながら,契約約款の効力は必ずしも絶対的なものではなく,その運用しだいでは,仮に訴訟になった場合などに利用停止等の措置の正当性が否認され,弊社が債務不履行の責めを負うことになる可能性があります。
このため,利用停止などの措置にあたっては,事実の有無の確認,当該行為が弊社と契約者の信頼関係を破壊するほどの行為であるか等の検討などを慎重に行う必要があります。
従来型の「プロバイダのメールサーバを使ったspam」については,弊社でも大量送信の規制を実施していますし,また弊社でもログを確認することで事実関係の確認が容易であるため,迅速に利用停止等の措置を講ずることが可能となっています。しかし,こうした形態のspamは今では少数派です。
現在多数を占めている「自前メールサーバからのspam」については,弊社に記録が残ることがなく,証拠が弊社が受理する苦情にもという事例が多々あります。このような場合,事実の確認を誤って利用停止などの措置をとってしまった場合に契約者が受ける損害等(そして弊社が負う法務リスク)の問題を考慮する必要があり,十分慎重に確認を行わなければなりません。
このため,迷惑メール対策法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)等の法令に定める指定法人からプロバイダに寄せられる連絡や,弊社に寄せられる多数の方の顕名の苦情などをもって,事実関係を積み上げるほかありません。
弊社は私企業であるという点でメールの送信者や契約者と対等な関係にあり,事実関係を専断できる立場にはありません。このため,指定法人からの情報提供があれば,中立な公益法人による事実関係の調査が行われていると評価することができ,比較的スムーズに対応を行うことが可能となります。特に法令違反のspamについては,その意味でも指定法人への連絡をお願いいたします。
このような結果事実関係が相当程度確認できた場合,弊社は提供約款に基づいて利用停止等の措置を行います。
お手数ですが,こちらをご参照の上,ご報告ください。
※2005年11月の特定電子メール法改正以降は,警察による捜査が期待できる事例については利用停止にかえて刑事告発を検討します.詳しくはこちらをご参照ください.
2 弊社管理ネットワークにあるサイトを宣伝する迷惑メールが他社網から送信されている場合
最近では,spamの送信に使うISPと,宣伝サイトの構築に使うISPを分ける事例が多く見受けられます。
このような場合,弊社でspamの送信の事実を認定することは非常に困難です。さらには,送信者と契約者の関係などを含めた事実関係が立証でき,かつ法律上の責任が弊社に及ばないだけの状況でなければ,弊社での利用停止等の措置は取れないと考えられます。
ISPは電気通信事業法の規制を受ける電気通信事業者ですが,同法6条(利用の公平)の規定により,サービスの提供について「不当な差別的取扱いをしてはならない」と定められています.法令上の根拠がなくサービスの提供を拒否すれば6条違反となり,改善命令などの行政処分を受ける可能性があるほか,利用を停止された利用者から損害賠償責任を追及されるおそれがあります.(法令違反行為は過失が推定される上,仮に相手が違法でもこちらの違法行為が許されるわけではありませんから,訴えられるとなかなか厳しいと思います.)
弊社にも宣伝サイトへのサービス提供を止めるよう求める苦情が寄せられることがありますが,弊社がこの措置を講じることができるか(講じた場合に弊社に法律上の責任が及ばないか)については必ずしも明らかでなく,迅速に当該措置を講じることは現時点では難しいと考えられます。
例えば名誉毀損・プライバシ侵害などの特定の人の権利が侵害されている状況においては,プロバイダ責任制限法により一定の場合にその送信防止を行ったとしてもその責任が生じないことが定められています。しかし,プロバイダ責任制限法においても権利侵害情報の流通を止めるために必要最小限度の措置であることが求められているところであり,自前サーバで立ち上がっているwebサイトへのアクセスサービス自体の提供の停止までは難しい場合が多いと考えられているようです。
このため,宣伝サイトへのサービス提供を止める行為は,「弊社の免責要件」に該当しないことになり,その結果,弊社に債務不履行(サービスを提供する義務の不履行)などの責任が及ぶ可能性が生じることとなります。
(いずれにせよ迷惑メールはプロバイダ責任制限法の枠外であり,ここでいう権利侵害情報の流通とは,公開されているwebサイトの内容により特定の人の権利が害される状況をいいます。この法律を根拠に弊社が債務不履行の責任を免れることはできず,単に「サービスの提供停止」という行為がどのような問題を生ずるかを検討するためのものです。)
また,そもそも宣伝サイトがつながらなくなったとしてもspamの送信を止めることにはつながらず,弊社としても目的と手段の正当性を必ずしも立証できると限らないという問題があります。
対応の可能性があるとすれば,事実関係の確認の過程で事実関係が相当蓄積でき,かつ,重大な違法行為の存在などが確認できた場合に,弊社が例外的にやむを得ない手段としての利用停止などが講じうる(債務不履行の原因が債権者(この場合は契約者)の過失にある場合に,債務不履行責任が免責されることがある)と考えております。ただしこの場合は過失の立証責任が弊社にあり,事実関係の確認には相当慎重を期さなければなりません。
結局のところ,spamで宣伝されたwebサイトへのサービス提供を停止することは,法理論上難しい場合が多いのではないかと考えられます。(spamで宣伝されたサイトのDNSが立ち上がっているという報告をいただいたこともありますが,なお難しいのではないでしょうか。)
もっとも,2008年11月の迷惑メール関連法の改正により,監督官庁(総務省および経済産業省)がISPに対し一定の契約者情報の提出を求めることができるようになり,それにより行政処分を実施できるようになっています.弊社は新規加入の際に身分証明書の呈示を受けるなど本人確認を強化していますので,法執行の実効性確保には相当協力できるのではないかと思います.
大変恐縮ですが,この事案については監督官庁への通報とあわせ,事実関係の集積ならびに対応検討のため,こちらをご参照の上,ご報告ください。