特定電子メール法改正以降の迷惑メール送信者への対応について
●2005年11月から,特定電子メール法違反の一部の行為について直罰が導入されます.
●警察による捜査が期待できる一部の事例については,利用停止による対応にかえて,弊社で慎重に証拠を収集の上で警察に告発するなど,送信者の検挙のために全面的な協力を行います.
●これらの対応は,大量送信を制限する技術的な対策とあわせて行います.
●受信者の皆様のご理解とご協力をお願いします.
一部の行為の直罰化について
2005年11月1日から,特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法,特電法)が改正され,迷惑メールの送信のうち一部の事例について,総務大臣の行政処分を経ることなく刑罰が科されることとなります.
従来の特定電子メール法は行政処分前置であったため,法令違反者にはまず総務大臣が行政処分(是正命令)を行い,それに従わなかった場合にはじめて犯罪となり刑罰を科されることとなっていました.
しかし,迷惑メールは送信者が誰かわからず,総務省も送信者に行政処分を課することがでません.したがって犯罪が成立しないため警察も捜査できず,結局送信者が処罰されることがないという状態が続いていました. (通信の発信者の氏名などは通信の秘密であり,行政処分のためであっても任意に行政庁に開示することは電気通信事業法により許されません.)
今回の改正法では,送信者情報を偽る送信について直罰が規定され,行為を行った時点で犯罪が成立することになりました.このため,直接警察が裁判所に令状を申請し,ISPに対して発信者の情報の開示を求めることが可能になります.
弊社の今後の対応方針について
現状 〜ISP間の「ババの押し付け合い」〜
弊社に限らずISP事業者は,すべて「迷惑メールを撲滅すること」を目標とし,各社ができるだけの対応をしていることと考えます.
しかし,現実に現在各社が行っている送信者への対応は,ほとんどが「迷惑メールの発信者の利用を停止すること」です.この対応は確かに「自社のネットワークを経由する迷惑メールの送信を止める」ことにはなりますが,「迷惑メール全体を抑止する」ことにはまったくつながっていません.
迷惑メールの送信者は,ある事業者で利用停止になってもすぐに他の事業者で送信を継続するようにあらかじめ準備をしています.(これを「渡り」といいますが,この対策は実に難しいものです.)
弊社でも迷惑メールの送信者に対してはまず利用停止の予告を行い,その後事実関係が明確になりしだい利用停止を行うこととしていますが,弊社が利用停止を行った10分後に同じ送信者と思われる迷惑メールが他のISP経由で観測点に届くという事例は全く珍しくありません.
ISPにおける対応の時間を早くすべきとのご意見も多くいただきますが,現在の迷惑メールはほとんどが「自前サーバ」からの送信であり,ISPにログが残りません.このため受信者からの申告だけが証拠になりますが,数件の申告で直ちに利用停止を行うわけにもいきませんので,ある程度の件数が集まるのを待って利用停止を行うことになります.また,事実誤認による利用停止を避けるためには一部の例外を除いて契約者に事前に利用停止の予告を行うことが必要と考えています.(この2つは同時進行で行っています.)
このため,一定の時間はどうしてもかかるものと考えられます.
現在各ISPが行っている利用停止の対応は結局のところ「ババの押し付け合い」であり,残念ながら「迷惑メールをこの世からなくす」ことにはおよそ程遠いものです.
このように,何の権限も調査能力もないISPが「本当に迷惑メールをなくす」手段をとることは難しいものですが,もし送信者を処罰に追い込むことができれば,事情は大きく変わる可能性があります.
迷惑メールを減らしながら,送信者の処罰を実現するために
法律の改正により,一部の行為(送信者情報を偽って送信する行為)が直罰の対象となり,警察が捜査を行うことが可能になりました.
弊社としては,今後,「同じ時間で送信できる通数を制限する」という技術的対策(詳細)を行いながら,「警察による捜査が期待できる事例については,全面的に協力する」ことといたします.(捜査が期待できない事例については,従来どおり適正な手続のもと利用停止等を実施することになります.)
受信者の皆様にご理解いただきたいこと
警察の捜査が行われる場合,令状の取得や証拠の収集などが行い,その上で被疑者の検挙という手順が踏まれます.このため,捜査には一定の時間を要することとなりますが,その間に利用停止により送信者が多くのISPを渡り歩いてしまうと,逆に捜査を困難にさせてしまうおそれがあります.
弊社では「送信者の処罰こそが最大の迷惑メール対策」との考えに基づき,捜査が期待できる事例についてはまずネットワークでの規制により送信通数を制限のうえ,その後警察に情報提供を行い,または告発を行うこととします.
このため,事例によっては利用停止を行わない判断をすることがありますが,安易に利用停止を行っても他のISPに移って送信を続ける可能性が高く問題の解決につながるとは考えにくいこと,1人でも送信者の検挙が行われれば迷惑メールに端を発する一連の消費者被害(架空請求,ワンクリックなど...)について芋づる式に検挙が行われる可能性もあることから,受信者の皆様にはご理解をいただきたいと考えています.
迷惑メール送信者に対する告発について
特定電子メール法違反のうち直罰となる行為については,誰でも告発を行うことが一応可能です.
告発とは,犯罪事実を捜査機関に申告して処罰を求めることをいいます.(被害者が行う場合は告訴といいます.)
弊社でも,警察の捜査が可能と思われる事例については捜査機関,業界団体,および登録送信適正化機関と協議の上で告発を行い,または情報提供を実施してまいります.
しかしながら,告発は「被疑者の処罰を求める行為」で,その意味は非常に重いものです.誤認による告発を行うことはあってはならないことです.
迷惑メールの送信者について受信者からの申告をもとに告発する場合,伝聞による証拠しかない事例がほとんどですので,「利用停止の予告を再三行ったにもかかわらず自主的にやめなかった(故意がある)」などの事実関係をきちんと集めて実施する必要があるのではないかと思います.
また,告発のためであっても通信の秘密を警察に任意開示することはできないことから,発信者の住所氏名等が「通信の秘密」と解される事例の場合は,弊社で情報を有していたとしても「被疑者不詳」で告発するほかないなどの難点もあります.(この問題については警察の理解を求めながら法令に抵触しないぎりぎりの線まで捜査に協力します.)
このため,受信者からの申告があれば直ちに告発ができるわけでもないことも,あらかじめご理解いただきたいと思います.(もちろん,可能な限り迅速に対応したいと考えています.)
なお,直罰がありうる送信者の告発は,登録送信適正化機関である日本データ通信協会も実施に向け準備を進めているほか,受信者自身でも行うことが可能ですので,デ協への申告および捜査機関への情報提供についても皆様のご協力をお願いしたいと存じます.
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